2022年度 日本比較政治学会(第25回大会)プログラム

2022年6月25日-26日 於 九州大学

 

Webフォームにより出席・欠席予定をお伺いします。2022年6月3日(金)までに以下のWebフォームへの入力を通じて、出席・欠席予定についてお知らせください。
会員用:https://pro.form-mailer.jp/fms/97e91780255571
非会員用:https://pro.form-mailer.jp/fms/f1d6abb6255577

 

*開催時刻、時間割などは現時点での案であることをご了承ください。
*報告題目などは、当日までに変更される可能性があります。

第1日 6月25日(土) 13:30~15:30

分科会A|「議会・議員はジェンダー・イシューをどう扱っているのか」

ジェンダーと政治の領域における議員や議会に関する研究では、特にフェミニズムに親和的な左派政党や女性議員の動向に焦点があてられることが多かった。近年では、保守政党や保守的な女性議員、また男性議員も、ジェンダー政治に関わるアクターであるとして分析の対象となってきている。同時に、どのようなジェンダー・イシューが議会における政治・政策論争の俎上に上るのか、それらのイシューについてどのような主張がなされるのかについては、国やアクターによって多様性が存在することも明らかになっている。

 ジェンダーの視点で議員行動や議会動向を分析する研究が多様なアクターとイシューを分析対象とし始めているというこのような現状を背景として、本分科会では議員個人および集合体としての議会が、ジェンダー・イシューに対してどのような姿勢をとっているのかを描写し分析することを目的とする。議員や議会はどのようなジェンダー・イシューにどのように関わっているのか。どのような要因が議員や議会の態度や言説に影響を及ぼしていると考えられるのか。このような問いを日本と韓国のケースを用いて比較検討することで、議会や議員のジェンダーをめぐる政治への参加(あるいは不参加)の有り様とその理由が明らかになるであろう。

司会
大澤 貴美子(岡山大学)

報告
崔 佳榮(駒澤大学)「幼児教育・保育の無償化をめぐるアイディアの政治」

堀江 孝司(東京都立大学)「ジェンダー・イシューをめぐる議員の政策ポジション-保守系女性議員の言説から-」

大倉 沙江(筑波大学)「コロナ禍における看護師の政治権力とその変化」

討論
加藤 雅俊(立命館大学)
大木 直子(椙山女学園大学)  

 

自由企画1|「Relational Approaches to Political Culture, Discourse, and Discursive Strategies」(to be held in English)

This panel consists of three presentations that aim to offer relational explanations for political culture, discourse and discursive strategies through the cases of Uganda, Palestine and Turkey respectively.
 The first presentation on Uganda’s political culture details how a revolutionary regime may coerce their citizenry, influence the state institutions/organs into submission and set taboos and agenda on fundamentally everything they find likely challenging to their legitimacy. It then seeks to demonstrate how the line between the definition of a revolutionary regime and state functions is extremely faint. When power is a result of military capture, the power-holders still believe in their military philosophy. the paper then argues that participatory political activities in Uganda remain a matter of mere publicity through rhetorical democratic practice. The intention here is not to emphasize the almighty notion of military and militarism in explaining regime consolidation. On the contrary, military rule or militarism cannot succeed devoid of other supporting causalities.
 The next presentation analyzes the discourse on heroism in the Palestinian struggle through the issue of political prisoners. Israel’s long-held practice of arbitrary arrests and imprisonment of Palestinian youth constitutes one of the main tools of control over Palestinian social life. The presentation examines how such concepts as “heroism” and “victory” are used in the context of prisoners’ release, hunger strikes, or a birth of the child of the imprisoned detainees, and what they embody. It seeks to show that these traditional concepts today represent reclamation of life under the carceral system, and that these sensibilities are co-constituting a wider Palestinian grassroots activism seeking to restore the struggle against the post-Oslo settler colonial reality.
 The final presentation deals with the identity building strategies employed by the Islamist political parties in Turkey. Interpretations on the principle of secularism and the role of religion in the political sphere remains a major contentious field in Turkish political life. In an effort to better understand the relationship between secularism and religiously oriented parties in the context of Turkish experience, this presentation aims to examine how political Islamists in Turkey have constructed the image of the secular elite in building their political identity and how this construction has evolved through time and different political parties.

Chair:
Yasuyuki Matsunaga (Tokyo University of Foreign Studies)

Presentations:
Ian Karusigarira (GRIPS) “Repression in a Revolutionary Matrix: Explaining the Revolutionary Culture in Uganda”
Makiko Nambu (Tokyo University of Foreign Studies) “Political Imprisonment and Discourse on Heroism in Palestine”
Esma Ozkan (Tokyo University of Foreign Studies) “Secularism and Discursive Strategies of Political Islam in Turkey”

Discussants:
Keiko Sakai (Chiba University)
Aiko Nishikida (Keio University)  

 

自由論題A| 「政党内外の公職候補者の選定過程―2000年代以降の韓国の場合」

司会
松本 俊太(名城大学)

報告
朴 志善(岡山大学),禹 隠喜(城西国際大学)「開放型の大統領候補者選定がもたらした政治的影響―2000年代以降の韓国の主要政党の事例を中心に―」

縄倉 晶雄(明治大学)「カルテル政党制下における小規模政党所属議員の生存戦略-2000年代以降の韓国を事例として-」

討論
藤村 直史(神戸大学)
松本 俊太(名城大学)  

 

自由論題B|「歴史と方法」

司会
近藤 康史(名古屋大学)

報告
今野 元(愛知県立大学)「美濃部達吉及び上杉愼吉にとってのゲオルク・イェリネック―天皇機関説論争のドイツ学的背景について―」

豊田 紳(アジア経済研究所)「政治科学批判―因果推論比較アプローチに対する行為者理解アプローチの優位性に関する方法論的考察―」

討論
鹿毛 利枝子(東京大学)
島田 幸典(京都大学)  

 

第1日 6月25日(土) 16:00~18:00

分科会B|「議会内外の議員行動と政党政治の比較研究-多様な政治制度の下で-」

現代の民主主義国家は、国民が代表を選び、代表同士で意思決定を行う代議制民主主義によって成り立っている。「代議制」という以上、国民の代表たる議員、および、議員の集団である政党は、どの国においても欠かせない要素である。ところが、同じ議員や政党とはいえ、その行動は、執政制度・議会制度・選挙制度といった各種の制度によって大きく異なる。では、異なる制度の下での議員や政党の行動、そしてそれが生み出す議会内外の政治の、共通点と相違点は何か。

本分科会は、3本の報告を通じて、この問いを考える。各報告が対象とするのは、いずれも先進民主主義国である。具体的には、大統領制の国を代表してアメリカ・議院内閣制の国である西欧諸国・そして、議院内閣制の国でありながら、アメリカに近い議会制度や西欧とは異なる政党組織といった特徴をもつ日本である。それぞれの報告によって、それぞれの国の執政制度を中心とした政治制度とその制約下での議員や政党の行動が明らかになるであろう。同時に、本分科会は、これら3本の報告の議論を通じて、様々な国、および、執政・議会・選挙・議員行動・政党といった様々な分野を専門とする研究者間の情報共有と対話を行うことを目指す。

司会
松本 俊太(名城大学)

報告
久保 浩樹(明治学院大学)「アメリカの対外援助をめぐる点呼投票分析」

新川 匠郎(神戸大学)“Referendum Support against Convergence of Political-institutional Configurations in European Democracies?: Time-differencing Qualitative Comparative Analysis (QCA)” (ペーパーのみ英語)

濱本 真輔(大阪大学),奥 健太郎(東海大学)「戦後日本における政党内立法過程の軌跡-『衆議院公報』の分析を通じて-」

討論
岡山 裕(慶應義塾大学)
日野 愛郎(早稲田大学)

 

分科会C|「民主主義と紛争

東南アジアには、いまも分離独立運動がくすぶる地域がある。権威主義体制下で運動は苛烈な弾圧を受け、武装ゲリラによる紛争は長期化した。民主化とともに政府は武装ゲリラと和平を結び、広範な自治を提供することで紛争を平和的に解決することをめざした。しかし、民主主義は必ずしも紛争を解決に導くとは限らず、平和的解決や人権尊重を掲げるはずの政権の下で暴力や人権侵害が深刻化する皮肉な現実がある。同時に、紛争の継続は軍・治安機関の役割を拡大させ、その国の民主主義に影を落としている。

本分科会では、東南アジアにおいて民主主義の下でも分離独立運動が解決していない地域を取り上げ、民主主義と紛争について分析したい。フィリピン南部のミンダナオ、タイ深南部、インドネシア東部のパプアの紛争を取り上げる。ミンダナオ紛争には民主的な政権の下で長期にわたって和平と自治地域発足の努力が続けられながら挫折してきた歴史があり、現在ようやく自治地域発足のための移行プロセスが進められている。タイ深南部では民主的な政権の下でむしろ紛争が激化したという経緯がある。パプアでは50年以上にわたり分離独立運動が継続しており、インドネシア民主化後に特別自治が付与されたものの、その後も治安部隊による人権侵害が絶えない。この3つの紛争事例から、民主主義が当該地域の紛争に与える影響、また紛争がその国の民主主義に及ぼす影響について考察する。

司会
増原 綾子(亜細亜大学)

報告
谷口 美代子(宮崎公立大学)「ミンダナオ紛争・和平にみるフィリピン「民主主義」のパラドックス」

西 直美(同志社大学)「1980年代以降の“民主主義”とタイ深南部紛争についての考察」

阿部 和美(秋田大学)「定着するパプアの「民主主義」」

討論
松野 明久(大阪大学)
中溝 和弥(京都大学)  

 

自由企画2|「福祉国家変容の事例分析」

従来、福祉国家の変化を捉えるための準拠枠として、主に福祉国家類型論が利用されてきた。しかし、そのほかにも変化を把握するうえで有用な分析視角が提起されている。

第一に、福祉多元主義である。1980年代以降、程度の差こそあれ、多くの国で政府は福祉領域から手を引いていった。では、政府に代わってどのようなアクターが福祉を担っているのか。市場か、家族か、それともサードセクターなのか。各国の制度遺産は多様であり、経路は一様ではない。

第二に、社会的投資論である。ポスト工業化に伴って「新しい社会的リスク」が現れると、各国は新旧二つの社会的リスクへの対応を迫られるようになった。そこで論点になったのは、所得保障政策(古い社会的リスクへの対応策)と投資的政策(新しい社会的リスクへの対応策)をどのように組み合わせるかであった。多くの国で所得保障より投資的政策に力が注がれたが、コロナ禍はこうした傾向に見直しを迫っている。生活不安の広がりに直面して所得保障政策に積極的に取り組む国が現れており、両者の組み合わせが主要な議題となっている。

第三に、「進歩主義のジレンマ」論である。移民が増えて社会の多様性が増すと、国民の連帯が損なわれる。結果として、同質的な国民の生活を守る仕組み(=福祉国家)は衰退せざるを得ない。このような「進歩主義のジレンマ」論には異論も寄せられているが、いずれにしても、社会的多様化の時代に福祉国家がどのように変化するのかに関心が集まっており、研究が積み重ねられている。

福祉国家変容をめぐっては、量的手法による多国間比較が盛んに行われる一方、事例研究が果たす役割もまた小さくない。事例分析は仮説の妥当性を検討したり、新しい仮説の構築に貢献している。本分科会では、単一・少数比較事例研究を通じて、それぞれの分析視角から福祉国家変容を検討する。

司会
近藤 正基(京都大学)

報告
ベ・ジュンソブ(神戸大学)「コロナ禍における日本の福祉国家:制約条件としての福祉制度とその変容」

井上 睦(北海学園大学)「日韓福祉国家におけるケアの「社会化」」

源島穣(山形大学)「福祉国家における「就労中心性」と移民の生活保障-イギリスを事例に-」

討論
西岡 晋(東北大学)
阪野 智一(元神戸大学)  

 

自由企画3|「20世紀前半のヨーロッパ『周辺』における政治活動」

今日、「権威主義化」やポピュリズムの席巻により、政治的実践・政治的原理としての議会制民主主義・自由民主主義の絶対的な地位は揺らぎつつある。また、マゾワーが『暗黒の大陸』で描いたように、このような視座は政治史研究においても遡及的に用いられつつある。近年、特にヨーロッパの現代史研究において戦間期政治史、特に権威主義化に関する比較研究が活況を呈している。そこでは、かつての比較研究においてさほど重視されなかったヨーロッパの「周辺」(バルカン半島、イベリア半島、バルト諸国など)にも十分目が配られている(むろん、それぞれの地域に関する個別研究は十分に蓄積されてきた)。

これらの研究は、戦間期の民主主義の「崩壊」を考察する際、ドイツやイタリアを引照基準とする見方に修正を迫るものである。両国の事例は、「強力に成長したファシズム運動が民主体制を打倒した」という図式で理解され、それ以外の国・事例は「準ファシズム」「失敗したファシズム」と位置づけられることが多かった。しかし、ヨーロッパ「周辺」の事例を仔細に検討すると、ファシズム運動が興隆する以前(1920年代)に、あるいはファシズム運動の展開とは直接関係なく権威主義化した事例の方がむしろ一般的である。

本パネルはそのような認識に基づき、戦間期にヨーロッパ「周辺」に起こった権威主義化を、政治変動論の観点から分析する。その際、①「周辺」としての規定条件(民主政治の発展の度合、経済・社会的条件、第一次大戦との関与の度合、「国家性」など)を踏まえ、②20世紀初頭まで遡りつつ、世紀転換期、ファシズム登場前夜の1920年代、そして1930年代において、それぞれ権威主義化がどのような背景のもとに、いかなる動態を示したのかをきめ細かく分析したい。

本パネルの報告者は、それぞれイベリア半島、バルカン半島、中欧を専門とするが、「周辺」の事例研究にとどまらず、ヨーロッパ以外(例えばトルコや日本など)への応用可能性を意識しつつ、権威主義化に向かう政治変動を比較分析するための枠組を提示することを目指す。

司会
山崎 望(駒澤大学)

報告
中根 一貴(大東文化大学)「20世紀前半におけるチェコ人リベラル・ナショナリスト勢力の模索と政治変動」

武藤 祥(関西学院大学)「1920年代の権威主義化-近代と現代のはざまで-」

藤嶋 亮(國學院大學)「戦間期東欧における権威主義とファシズム」

討論
山崎 望(駒澤大学)
立石 洋子(同志社大学)  

 

自由論題C|「Why Bother with Studying Elections? Electoral Candidates, E-Voting, and Electoral Manipulation」(to be held in Japanese and English)

司会/Chair:
菊池 啓一(アジア経済研究所)

報告/Presentations:
岡田 勇(名古屋大学),磯田 沙織(神田外語大学)“Political Careers in “Democracy without Parties”: A Preliminary Analysis on the Pathways from Subnational to National Electoral Arena in Peru”

Régis Dandoy(Universidad San Francisco de Quito) “The impact of e-voting on invalid votes in five countries”

塚田 真司(早稲田大学・院)「選挙不正方法の選択と実施―リーダーと体制側エリートの戦略的相互作用に着目して―」

討論/Discussants:
藤村 直史(神戸大学)
中井 遼(北九州市立大学)  

 

第2日 6月26日(日) 10:00~12:00

共通論題|「危機と国家

近年、比較政治学の分析対象として中心的位置を占めてきた「国家(state)」への関心が、後景に退いてきているように思われる。その背景には、「因果推論革命」を経た現在の政治学の実証水準では、反実仮想を作りにくい国家レベルの分析よりも、より堅固な因果推論が可能な個人や地域レベルの分析へとシフトしているという潮流があるのかもしれない。

しかし、この間の新型コロナウイルス(COVID-19)への対応に見られるように、特に危機に際して対応する国家の重要性はいささかも減じてはいないように見える。領土内での物理的強制力の正当(正統)な行使を独占する唯一の組織である国家は、感染症の蔓延のように、対処に集合行為を必要とする危機に際しては中心的役割を果たさざるをえない。しかし、国家が対応に中心的役割を果たす危機は感染症の蔓延には限られず、かつて国家論が指摘したように、経済的危機への対応にも国家が重要な役割を担っており、しかも国家の組織形態や国家-社会関係のあり方が危機対応への違いを生むとつとに指摘されてきた。さらに、危機には国家を形作る側面もある。戦争のような軍事的危機や、大恐慌のような経済的危機が、国家のあり方を根本から改めてきた。では、現下の危機は国家をどのような方向へと変化させていくのだろうか。

そこで、本共通論題では、制度形態や統治能力といった国家のあり方の違いが危機への対応にどのような差異をもたらすのかという側面と、危機が国家のあり方を形作る側面の両方を視野に入れ、理論的かつ/あるいは実証的なアプローチから検討していきたい。

司会
稗田 健志(大阪市立大学)

報告
安中 進(早稲田大学)「政治体制とCOVID-19」

佐藤 俊輔(國學院大學)「危機の時代における欧州統合と国家」

武田 宏子(名古屋大学)「再生産の危機と国家-現代日本から考える-」

討論
加藤 淳子(東京大学)
近藤 康史(名古屋大学)

 

第2日 6月26日(日) 12:10~14:00

12:10~13:00理事会

13:00~14:00総会

 

第2日 6月26日(日) 14:00~16:00

分科会D|「テキスト分析と比較政治学

インターネットの発達によるオンライン上での文書データ取得の易化、SNSの台頭、PCの処理能力の向上、分析に供するソフト開発の進展などの影響を受け、テキスト分析は近年の社会科学における重要な分析手法の一つとなっている。比較政治学もその潮流の例外ではなく、政治制度を対象としたものから行動論に至るまで、テキスト分析が多く用いられている。例えば、議会研究では、記名投票データの代わりに議事録に記載されている発言データ等から各議員の選好(理想点)を推定するものが増えている。また、行動論では、感情分析などを行う研究も少なくない。

しかしその一方で、誤解を恐れずに言えば、これまでの本学会研究大会におけるテキスト分析の扱いは(それを用いた報告が皆無であったわけではないものの)限定的であったように思われる。そこで、本分科会は、異なるテキスト分析の手法を用いた3つの報告とディスカッションを通じ、幅広い研究分野に応用可能であるテキスト分析に対する我々の理解を深めることを目的とする。時間が許すようであれば、分析に使用するソフトやパッケージ、分析対象となる言語による前処理の違い等といった実践的な面についても意見交換を行うことができればと考えている。

司会
菊池 啓一(アジア経済研究所)

報告
于 海春(早稲田大学)「ソーシャルメディアを活用した武漢「封鎖」における中国国民感情変化の分析」

渡辺 綾(アジア経済研究所),久保 慶一(早稲田大学)“Conflict Dynamics and Domestic Politics: Media Coverage of the Mindanao Conflict in the Philippines”

福井 英次郎(明海大学)「日本の新聞におけるEU像」

討論
末近 浩太(立命館大学)
西川 賢(津田塾大学)  

 

分科会E 「分離主義問題の政治的ダイナミクス

ある政治集団が既存の領域的枠組みからの分離・独立を主張する現象は、現在、世界各地で広く観察することができる。このような分離主義問題の中には、対立が激しい武力紛争へと至るものと、法的・政治的枠組み内部に留まるものがある。また紛争が長期に渡って継続し分離主義地域の要求が満たされないものと、紛争後、分離主義地域が中央政府の統制を離れ事実上の独立を達成するもの、あるいは当事者の間で法的・政治的な合意に達するものがある。このような分離主義問題の多様性は、いかなる政治的ダイナミクスを当該地域(分離主義を掲げる地域やその領域が所属する国)にもたらすのであろうか。

これまで、往々にして分離主義問題は、各々の地域研究のフィールドの枠内に留まることが多く、地域を超えた学術的対話が日本では十分になされてこなかった。本パネルでは分離主義問題を抱えている複数の地域から企画を構成し、事例も先進国と途上国、武力紛争へと至った事例と法的・政治的対立に留まる事例などに目配せし、地域を超えて分離主義問題の政治的ダイナミクスを考察することを目指す。

司会 
富樫 耕介(同志社大学)

報告 
鈴木 啓之(東京大学)「パレスチナにおける独立運動の蹉跌と国家建設」

立花 優(北海道大学)「パトロン国家における非承認国家の優先度変化-アルメニア・カラバフ関係-」

荒木 隆人(広島大学)「マルチナショナル連邦制とケベック独立問題の現在」

討論 
白川 俊介(関西学院大学)
永田 智成(南山大学)

 

自由企画4「「脱イデオロギー」と「新しい社会運動」の時代の政党政治-ヨーロッパの1970年代-」 

近年のヨーロッパでは、環境、ジェンダー、LGBTQ、外国の背景を持つ市民の権利など、いわゆるGAL(Green、Alternative、Libertarian)の争点が、政治の中に確立した地位を占めている。ポピュリズム政党・政治家への支持は、GALのエスタブリッシュメント化に対する反動であることにも注目する必要がある。その一方で、「国民の社会的連帯か」それとも「自由な市場か」という左右のイデオロギー対立は、(おそらく前者の敗北という形で)政治における意味を失いつつある。

この変化の出発点となったのが、1970年代である。1960年代の経済的繁栄と脱イデオロギー化、その中で生じた学生運動は、1970年代にさまざまな新しい政治的な争点の登場を促した。さらに、1973年から始まる経済不況によって成長と分配の「戦後」は終わり、新しい生き方や価値観に基づいた政治的要求の表出が目指されるようになる。共通の価値観に基礎を置く、集団間の協調的政治に基礎を置いてきた政党政治が、新しい政治的要求の挑戦を受ける一方で、司法や運動、言論など政党政治以外の場に新しい政治の場が切り広げられていく時期でもあった。

このように現在につながる重要な時期であるのにもかかわらず、1970年代の政治史的研究の蓄積は十分であるとは言えない。考えてみれば,GとAとLが結びつく論理的必然性はない。これらの争点はいかにして重なり合ったのか。またこれらの論点はどのような対抗構想を生み、それらはどのように結びついたのか。現代政治分析が前提とする対抗軸が生成するプロセスは、まだ学問的に明らかにされていない。本企画ではこの大きなテーマのうち、後者の論点、すなわち新しい運動や争点に対する対抗構想の実相を解明することを目指し、脱イデオロギー化、新しい社会運動に抗する秩序形成、政党政治の変化の三つの切り口から、この時期のヨーロッパ政治の実態に政治史的にアプローチする。

まず、作内報告は、オランダの中央計画局CPBによるマクロ経済予測に着目する。戦後始まったこの仕組みは、1970年代以降変容を遂げ、当初コーポラティズムや予算形成といった領域に限定されていたCPBの影響力が連立形成や選挙での政党間競合にまで及ぶようになった。また予測のモデルもケインズ主義からサプライサイドモデルに移行していった。その結果、政党間のマクロ経済政策は新自由主義的に収斂したのである。本報告では、1970年代の各政党、政権のこの仕組みへの対応を後付け、オランダにおける政党、政党政治の脱イデオロギー化とテクノクラシー化の動向を検討する。

次に、板橋報告では、従来「赤い10年」とイメージされていた西ドイツの1970年代について、「保守」の側に注目し、ジェンダー争点や移民問題の扱い方、教育の現場における対立などを通して、生活様式や価値観の変化といった社会の現代化、リベラル化に対し、「保守」がこれをどのようにとらえ、どう対応しようとしていたのかについて検討を行う。その際、多様な「保守」的言説と、政党としてのCDU/CSUの関係にも目を向ける。

最後に中田報告では、当時の政党を巡る言説を対象とし、脱イデオロギー化と新しい争点を巻き込んだ再イデオロギー化、新しい社会運動を通じた政党外への政治空間の拡大の二点に注目しながら、同時代の分析者からは政党はどのようにみられていたのか、長期的にはこの時期は政党のどのような転換点にあたるのかを検討する。 この三つの報告を通じて1970年代の「転換」に関し、将来の研究につながるような手がかりを見出していければと考えている。

司会 
網谷 龍介(津田塾大学)

報告 
作内 由子(獨協大学)「経済政策決定構造の転換点としてのオランダの70年代」

板橋 拓己(成蹊大学)「1970 年代の西ドイツにおける保守主義の変容」

中田 瑞穂(明治学院大学)「政党政治研究から見る1970年代のヨーロッパ」

討論 
網谷 龍介(津田塾大学)
中村 督(南山大学)

自由論題D 「公共政策の諸相と変化」 

司会 
大澤 貴美子(岡山大学)

報告 
早川 有紀(関西学院大学)「米国における食品安全政策とリスク管理―規制革新と持続性の観点から―」

尹 海圓 (東京大学・院) 「1990年代における韓国のイノベーション政策の政治的ダイナミズムの分析―Valenceを訴える支持獲得戦略と産業政策の福祉政策化に着目して―」

討論 
秋吉 貴雄(中央大学)
上川 龍之進(大阪大学)