日本比較政治学会設立趣意書

 21世紀まで残すところ3年足らずとなった今日、国際関係は言うに及ばず、各国の内政もまた世界化の大きなうねりに巻き込まれている。日本もその例外ではなく、世界各国との経済・文化・社会のレベルでの交流が一段と深まるにつれて、その内政の動向に対する社会的な関心も高まっている。学術的にも世界のさまざまな地域や諸国の政治および外交の歴史や現状を専攻する研究者の数が順調に増加しており、そうした研究者の研究成果を社会的要請に応えて活用する必要が感じられるようになっている。

 とりわけ冷戦後の世界では、NIESや発展途上国の民主化、旧社会主義諸国の民主化および市場経済化、先進諸国の行財政改革などといった政治経済体制の根幹に関わる争点が、重大な課題として浮上してきている。これらの課題への取り組みには、単に実務的な観点から対処するだけでは十分でない。現在の諸問題の歴史的背景を解明し、それを踏まえて学術的な観点から課題の設定の仕方に立ち返って問題点を理論的に整理し、効果的な政策や制度を構想していくことも必要である。そのためには各国別の研究にとどまらず、その成果を踏まえて理論的に各国の政治や外交を比較・検討し、研究上の新たな飛躍を生み出すことが肝要である。

 このような目的のために、本学会は世界各国の政治や外交を専攻する内外の研究者を集め、相互の交流と協力を促進するとともに、研究上も独自な成果を公表し、国際的にも発信することを目指している。と同時に社会的にも開かれた学会として、各国政府関係者、ジャーナリスト、民間機関・NGO等各種実務家との交流も、振興することを目的にしている。本学会の学術活動に貢献していただける方々の、協力をさらに期待するところである。

1998年6月27日